久しぶりに実家に帰ったら、親がタンスの掃除でもして見つけたのか私が小学生の時に描いた絵を部屋に飾っていた。
その絵は地元の神社を写生した絵で、市のコンクールで何かの賞を受賞した作品だった。
私は小学生の時から風景や人物の絵はなかなか上手に描くことができた。
というのも別に絵心があるわけではなく、簡単に上手く描く単純な方法を使っていたからだ。
風景、人物の写生というのは見たままを描く、ただのトレースみたいなものであり才能や努力はほとんど関係ない。
ただトレースというのはモデルとなる絵や写真を下にして、線をなぞるという行為の事を指すと思うので、ここでの方法はトレースとは言わないと思う。がほとんど同じことである。
比を目で推量して写すのだ。
写生なんだから当たり前だと思うかもしれないが、周りの人を見てもちゃんとこれをやってる人は少ないように見えた。
最初はキャンパスに何も基準となるものがないので、キャンパスの枠とモデルの範囲を対応させて比を求める。
キャンパスの縦横それぞれに1/2の所、1/4の所、キャンパスの中心などに印を付けておくとやり易い。
そして「ここの柵は右端の真ん中から少し、1/6ぐらい下にずれたところから始まる」などと目で推量する。
一旦、モデルの一部をキャンパスに描いたら後はそれも基準に比を求めることができる。
どこかで絵がおかしくなったら、それはどこかの比がおかしいのだ。
モデル上での比がキャンパス上に再現されているか、細かく見直す。
比のいいところは、モデル上のいろんな部分と比較してそれぞれ比を求められることだ。
「この柱はあっちの柱の1.5倍の高さだ、窓と比べると3倍だ」と多くの部分と比較する程、比をキャンパスに正確に反映できる。
鉛筆の段階では、写生というのはほとんど測量に近い。